性教育を始めるのに良い時期は、実は3〜5歳と親が思っているより早め。偏った性情報が低年齢の子どもにも流れてくる現代(前回の記事「【子どもと性】児童買春、児童ポルノ、中絶、性感染症の低年齢化―偏った性情報が子どもを被害者に」参照)、親子で性に向き合い、正しい情報を伝えて行くにはどうしたら良いかを考えてきたいと思います。
家庭での性教育の始め方―まずは産まれてくれたことへの感謝の気持ちから―
性について、どうやって話したら良いか分からない、という方が多いと思いますが、難しく構える必要はありません。まずは、子どもの誕生、産まれてきてくれたことの喜び、幸せ、存在してくれていることへの感謝の気持ちを伝えましょう。
そして、生命誕生の神秘を伝え、自分という存在は唯一無二の存在であること。
自分のいのちの大切さがわかること。
いのちを大切にするためにはどんな生き方、どんな性行動をとっていったらいいのかを一緒に考える。
これがおおまかな流れでしょう。
そこに、子どもの発達段階に合わせて、セックス・妊娠・人工妊娠中絶・性感染症・性被害等を子どもの理解力に合わせて入れていきます。
学校でも保健の授業や特別授業などを通して性教育が行われます。
子どもに学校の教科書や教材を見せてもらい、「どんなふうに教わったの?」と聞きながら、足りない部分を補足していくのも良いかもしれません。
我が家では息子に確認したときに、性感染症はセックスでうつるとは思っていなかったという返答がありました。
それは、「性的接触」という言い回しがセックスだということが理解されておらず、自分にも関係のあることとして捉えることができなかったためのようです。
子どもたちが自分の事としてイメージできるように、心に届く話がいかにできるかが、子どもの生き方に影響を与え、行動へとつながっていくのではないでしょうか。
性教育を始めるタイミングと始め方
性教育開始の時期は、前回の記事でも少しお話しさせて頂きましたが、3~5歳頃、「赤ちゃんはどこから来たの?」の問いが子どもから来たら、スタート時期だと思います。
「いい質問ね」「聞いてくれて嬉しいわ」と肯定的に捉えて話をしていきます。
絵本など、うまく教材を使うのも一つの方法です。
その際に大切なことは、誕生の喜びを必ず入れて肯定的に伝えることです。
そして、分かりやすい簡単な言葉で話していきます。
まずは「男の人と女の人の体の中には別々の赤ちゃんの元があり、その二つの赤ちゃんの元が出会って赤ちゃんになる」「男の人だけが持っている赤ちゃんの元はペニス(おちんちん)の横にある袋の中にある。そして女の人が持っている赤ちゃんの元は、おしっこの出る所の間に赤ちゃんの通り道があり、その奥にある赤ちゃんのお部屋の横にある袋の中にある」と説明します。
また、この赤ちゃんの元がある部分と、赤ちゃんを育てるためのおっぱいは、特別に大切な所なので、汚い手で触ったり、人に見せたりしてはいけないのだとプライベートゾーンの大切さにつなげることができます。
この部分に触れられたり、見られたり、また見せられたりしたら、「いやだ!」と大きな声で叫んで逃げるよう性被害の防止につなげて話すこともできます。
セックスの子どもたちへの伝え方
次に<いのちの元がどのようにして出会うのか>というセックスについての説明ですが、
「男の人が持っている赤ちゃんの元は空気に触れても水に触れても弱いので、ペニス(おちんちん)を使って大切に、赤ちゃんの通り道を使って女の人の持っている赤ちゃんのもとに近づけて送り込む」というような表現が語りやすいのではないかと思います。
セックスの説明は勇気がいると思います。しかし、語る者が恥ずかしがらないことです。恥ずかしがって話すとそのように伝わります。性行為は本来恥ずかしいものではありません。いのちを産みだす可能性があり、最高の愛の表現であり、本能的な喜びとして人間に与えられていることです。
性行為は素晴らしいことなのです。
そのような思いで語りましょう。
そして当然、セックスは、「二つのいのちの元が出会うことによって赤ちゃんが生まれる可能性がある、とても大切な、とっておきのことなのだということ。だから、絶対に簡単にしてはいけない」ということも教えましょう。
分かりやすい絵図や絵本などをうまく活用するのも有効ですし、何よりも子どもと性の素晴らしさ・感動を一緒に共有しあうことができればいいのです。
例えば下記の絵本がおすすめです。
わたしのはなし (おかあさんとみる性の本)
ぼくのはなし (おかあさんとみる性の本)
¥1,540 (2024年12月9日 06:07 GMT +09:00 時点 - 詳細はこちら商品価格と取扱状況は記載された日時の時点で正確で、また常に変動します。Amazon のサイトに表示された価格と取扱状況の情報は、この商品が購入されたその時のものが適用されます。)『わたしのはなし』『ぼくのはなし』 童心社
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『あかちゃんはこうしてできる』アーニ出版
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『ぼくどこからきたの』河出書房新社
絵本の中でも、語りにくいセックスの絵図は2~3枚です。
全体の中のたった数枚。ここからも分かるように、私たちはセックスに触れたとしても、性やいのちの誕生を語る中でのほんの一部なのです。
子どもは決してセックスのことだけにこだわりません。
もっと全体を見て聞いて、それぞれの所で彼らが必要と思ったことを汲みとっていきます。
セックス・性交については、できれば誤った性情報に触れ興味本位になってしまう前の、純粋に受け取られる小学校3年までに伝えられると、後に続く高学年の第2次性徴・いのちの重みや責任につなげやすいかと思っています。
幸せに赤ちゃんを育てるために必要なことも伝えましょう
そしていのちの元(精子・卵子)が赤ちゃんになる前には、「しっかりと大人として成長しておく」必要があることも伝えます。それは、赤ちゃんを育てるだけの収入があること、家や部屋があること、赤ちゃんを迎える心の準備ができていること、そして何よりも赤ちゃんを一緒に育てる「愛するパートナー」に出会うこと。
できるだけ大きな愛を持った人に出会えるように、自分自身も、心の中の愛を大きくしましょうと伝えていけたらと思います。そのためにできることは、「自分のことのように他人の人を大切にできる心」「他の人の喜びや悲しみを知りたいとわかりたいと思う心」「元気の出る言葉を一杯もっておける心」この3つの心を育てられるように子どもと関わることでしょうか。
性教育について、私たち親ができること
性教育の在り方は、NO SEX、SAFER SEX…様々な考え方や意見があります。
それは、その人の生き方・価値観がそのまま性の在り方に反映されていくからだと思います。
ゆえに子どもに性を伝えるということは、親の生き方の姿勢が表れることになるのだと思います。
性とは、心を生きると書きます。
自分はどこから生まれたのか?自分は何者か?という、この世における、自分の存在価値やアイデンティ(正体)という、人が生きていくための土台を、子どもはまず考えます。
それが子どもからの「赤ちゃんはどうやって生まれてきたの?」の問いではないでしょうか?
そのような言葉が来たら、「コウノトリが運んできた・・」などとおとぎ話のような話で終わらせたくはありません。
子どもは本当に純粋で自分のルーツを知りたいだけなので、「君が生まれる前にお父さんとお母さんが出会って、好きになって愛し合って、どれほど君の存在を心待ちにしていたことか・・」と話し始めることが大切です。
そこで初めて自分のルーツを知り、どれだけ望まれ愛されて来たのかという、自分の価値に気づき、自分を大切に、人を大切に生きようと感じるのではないでしょうか。
親が子どもをどこまでも保護下に置き、危険から回避させるには限界があります。
やがて子どもは一人で歩きだし、これはしていいのか悪いのかと、子ども自身が判断して選択していくことが自立していくことなのだと思います。
その際、危険や誘惑にあうときに、自分を愛してくれたお父さんやお母さん、または大切な人を悲しませてはいけないと思うことが、セックスに限らず、いろいろな場面の歯止めになっていくのです。性とは自分の生き方在り方の延長線上にあるのだと思います。
ですから、性を子どもに伝えることは、親である私たち自身が自分の生き方、在り方を見つめ直す機会でもあるのです。
by 森崎智恵子@Japan(保健師。都内保健所保健センター勤務時に感染症予防・エイズ予防相談に関わる。命の尊さ重さを実感し、伝えていくことの重要性を認識。現在「伝える場」を広げるべく活動中)
引用:お母さんのための性といのちの子育読本(永原郁子 著)
The World’s Mother Salonでは、この夏、性教育について特集しています。
第一弾
【子どもと性】性教育は学校任せでいいの?学校教育の現状を見てみましょう。
第二弾
【子どもと性】児童買春、児童ポルノ、中絶、性感染症の低年齢化―偏った性情報が子どもを被害者に
以前掲載しましたドイツの性教育の記事も合わせてお読みください。
【子どもと性:ドイツ】生物の授業で性について学ぶー自然に考える機会を子ども達にー
日本とは違った角度から、具体的に正しい知識を与えようという試みが新鮮です。
その他、日本の性教育や性犯罪の現状から海外の性教育事情について、様々な視点で情報を配信しています。
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