もう一つの家族の形「里親制度」を知ろうvol.2〜養育里親、特別養子縁組、私たちにできること〜

もう一つの家族の形「里親制度」を知ろうvol.2〜養育里親、特別養子縁組、私たちにできること〜

前回、もう一つの家族の形「里親制度」を知ろうvol.1 ~全ての子どもに家庭的な環境を~では児童養護施設に保護されている子どもたちの現状や、年々増える虐待などの自動相談所への通報件数などをお伝えしましたが、今回は、それを踏まえて私たちにできることについてご紹介します。

養育里親になるためには

では、養育里親になるためにはどのようにしたらよいのでしょうか。
一定期間子どもを養育する「養育里親」になるには、以下の流れを通ることが必要になります。

養育里親の里親研修と登録の流れ

詳細はこちらからもご覧いただけますので、是非ご参考ください。
公益財団法人全国里親会

特別養子縁組で子どもを迎えるには

一方、血縁のない子どもを、特別養子縁組を通して迎えるためには2つの方法があります。一つは児童相談所に登録して子どもを紹介してもらう方法、もう一つは特別養子縁組を仲介する民間あせん機関に登録し主に新生児(幼児)をあっせんしてもらう方法です。

児童相談所で子どもを紹介してもらうためには、まずは都道府県が認定する「養子縁組里親」に、登録することが必要です。

民間あっせん機関で(特別養子縁組で育ての親として赤ちゃんを迎え入れるため)の主な方法は、申し込み→審査→面談→待機登録委託といった流れになります。

両者とも、その後裁判所にて審判申立が行われ、裁判所により聞き取り調査、児童相談所や民間あっせん機関による家庭訪問などが行われます。そして養子縁組成立の審判が確定すると、戸籍上実子となります。

一般的に児童相談所を通した場合は、生まれてすぐの新生児は少ないのが実情で(愛知県など一部の児童相談所では新生児の特別養子縁組に積極的に取り組んでいますが、増え続ける虐待対応による人手不足から新生児委託を実施している児童相談所は全国的に少ないためです)、紹介されるのは、すでに乳児院や児童養護施設で暮らす6歳未満の子どもが大半となります。一方、民間事業者を通した場合は、予期しない妊娠をした女性が出産した新生児の紹介が多くなりますし、待機登録から委託までスピーディに対応できるのも特徴です。

費用に関しては、児童相談所に登録し、子どもを紹介してもらうのは、基本的に無料です。一方民間事業者のあっせん費用は、それぞれの機関の特徴があり、まちまちです。

特別養子縁組団体は許可制に

これまで特別養子縁組のあっせんができる団体は届け出制でしたが、こうしたサポート体制を強化していくため、2016年12月に許可制になりました。これにより受け入れ側に対する審査はもとより、継続的なフォローもしっかりとされるようになりました。

養子縁組あっせん事業者一覧(平成30年12月26日現在)

養子縁組あっせん事業者一覧

平成31年1厚生労働省子ども家庭局家庭福祉課 社会的養育の推進に向けて

子どもを育てられない理由は、貧困、子どもの障害、予想外の妊娠など

今回は特別養子縁組の現状について理解するため、5年前からサポートをされている一般社団法人ベアホープのご担当者にお話しを伺いました。(ベアホープも許可事業者として登録されています。詳しくはこちら

ベアホープの妊娠相談フォームには日々、自分で育てられない等といった相談が寄せられます。理由は貧困、住む場所がない、子どもの障害、性風俗による予想外の妊娠といったものが多く、5年前に設立以後、特別養子縁組件数は100件を超え、年々増加しているとのことです。

年齢的には10代の中学生や高校生もいます。子どもは体の変化に気づかず、そして大人も気付かず、そうこうしているうちに中絶期間を過ぎてしまうというケースも。この時に親や周りの大人が一緒に乗り越えようとしっかり向き合うことができた場合と、突き放してしまう場合では、その先の子どもの人生が全く変わってきます。

不妊治療を経て養親を希望する方も

養親になりたいと希望してくる方も様々です。長年の不妊治療を経てこの「特別養子縁組」を知り、養親になりたいと来られる方もいるとのことですが、45歳を過ぎてくると年齢的な点からマッチングは難しくなるようです。

特別養子縁組は、家族を作るという新しい形

こうした子どもたちを家族として迎い入れ、幸せな家族を築いている方はたくさんいます。
養親さんへのインタビューも是非ご覧ください。
自分で子どもを産むのだけが家族の形ではなく、特別養子縁組という選択肢もあるということを是非知っていただけたらと思います。

私たちにできること―社会全体でサポートを―

 もう一つの家族の形「里親制度」を知ろうvol.2〜養育里親、特別養子縁組、私たちにできること〜

①「里親」として子どもの一時養育を

上述したように、諸外国と比べると日本の里親委託率はまだまだ低い状況です。「里親」という仕組みがあることを知り、社会全体で理解を深め合いながら、今、目の前にいる子どもたちをみんなで守り、育てていこうという意識を広げるだけでも、社会は変わっていくはずです。
里親の説明会は各自治体で行われています。「里親 説明会」で検索すると各自治体の取り組みが出てきますので、是非チェックしてみてください。

②「養子縁組」で新しい家族の形を

もし身近に予想外の妊娠などで困っている方がいたら、是非、こういったサポートもあるということを教えてあげてください。思い詰めて自分で出産し、そのまま放置してしまうといった事件がよく報道されていますが、一緒に考えてあげられる人が近くにいるだけで、最悪の事態を避けることはできるはずです。

先行き不透明な社会の中で、大人が抱えているストレスも相当なものですが、何も知らない子どもたちがそのストレスの犠牲になることだけは防がなければなりません。全ての子どもたちが自分の人生を幸せに生き抜いていけるように、社会全体でサポートしていきたいですね!

世界マザーサロン 代表理事 永井佐千子

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