もう一つの家族の形「里親制度」を知ろうvol.1 ~全ての子どもに家庭的な環境を~

里親という新しい家族の形

世界マザーサロンは、“全ての子どもたちが自分で自分の体と心を守れるようにする”ことを目指して、児童養護施設での料理教室を定期的に開催しています(食事料アップ!サポートプロジェクト)。2017年から始め、現在では長野、東京、船橋の3施設に広がっています。

関連記事

【報告】児童養護施設でのおやつ作り教室(2019年2月~4月)

最近では児童養護施設について報道されることも増えてきましたが、子どもたちに「より家庭的な環境を」ということが課題として挙げられ、様々な取り組みが推進されています。今回は子どもたちが置かれている現状を見ながら、現在、国が積極的に推進している「里親制度」について見ていきたいと思います。

里親、児童養護施設、乳児院など―対象児童は約4万5千人

保護者のない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童などに対し、公的な責任として、里親、ファミリーホーム、各種施設を通して、社会的養護が行われています。現在、対象児童は約4万5千人います。

里親、児童養護施設、乳児院など―対象児童は約4万5千人

 

平29(2017)年度、児相への通報は13万件を突破・・・

児童相談所での児童虐待相談対応件数は、平成29(2017)年度には13万件を突破しました。通報しやすい環境になってきたという背景もあるかもしれませんが、確実に虐待件数は増えています。

児童相談所での児童虐待相談対応件数等

里親に委託されている子どものうち約3割、乳児院に入所している子どものうち約4割、児童養護施設に入所している子どものうち約6割は、虐待を受けているとの報告です。

尚、児童相談所での虐待相談内容については、心理的虐待が最も多くなっています。大人側の精神的、経済的、または体力的な余裕のなさのしわ寄せが子どもに行ってしまっているのではないでしょうか。

児童相談所での虐待相談の内容別件数の推移

こうした心や体に傷を負った子どもたちが安心して暮らせるよう、児童養護施設では子どもたちの心のケア、生活面のサポート等、きめ細やかに対応をされています。

より家庭に近い環境を子どもたちへ

そして、平成28年には児童福祉法が改正され、子どもが権利の主体であること、実親による養育が困難であれば、里親や特別養子縁組などで養育されるよう、家庭養育優先の理念等が規定されました。この改正法の理念を具体化するため、厚生労働大臣が参集し開催された有識者による検討会(新たな社会的養育の在り方に関する検討会)で「新しい社会的養育ビジョン」がとりまとめられました。

例えば、以下の目標が立てられています。

・遅くとも平成32年度までに全国で行われるフォスタリング機関事業の整備を確実に完了する。
・愛着形成に最も重要な時期である3歳未満については概ね5年以内に、それ以外の就学前の子どもについては概ね7年以内に里親委託率75%以上を実現し、学童期以降は概ね10年以内を目途に里親委託率50%以上を実現する(平成27年度末の里親委託率(全年齢)17.5%)。
・施設での滞在期間は、原則として乳幼児は数か月以内、学童期以降は1年以内。(特別なケアが必要な学童期以降の子どもであっても3年以内を原則とする。)
・概ね5年以内に、現状の約2倍である年間1000人以上の特別養子縁組成立を目指し、その後も増加を図る。

里親制度を通して温かい家庭を多くの子どもたちに

新しい家族の形

里親制度とは、何らかの事情により家庭での養育が困難又は受けられなくなった子どもたちに、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度です。 家庭での生活を通じて、子どもが成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子どもの健全な育成を図る有意義な制度です。(公益財団法人全国里親会より)

里親には大きく分けて二種類あります。

養育里親

一つは養育里親。これは、原則として0歳~18歳まで(進学しなかった場合は中学卒業まで)の要保護児童を「一定期間」養育する里親です。必要な場合には、20歳未満まで措置、延長できることとされています。

特別養子縁組里親

そしてもう一つが、特別養子縁組里親。「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の為の制度です。原則6歳未満の養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。

まだまだ低い日本の里親委託率

日本の里親委託率は19.7%となっており、施設養護が大半を占めている状況です。これは下のグラフからも分かるように、諸外国と比べるとまだまだ低い状況です。

諸外国における里親等委託率の状況

ですが、新潟市では委託率が57.5%を占めるなど、積極的に推進している自治体もあります。里親委託率を上げていくには、家族、学校、地域等の理解が不可欠です。

都道府県市別の里親委託率の差

それでは、養育里親になるには、特別養子縁組を組むにはどうしたら良いのでしょうか。次回はそれらについて、また、生まれてくる子どもを守るために、私たちにできることなどについてご紹介いたします。

世界マザーサロン 代表理事 永井佐千子

コメントを残す