平成27年度の全国学力・学習状況調査の結果から見る小学生の通塾率が公表されていました。全国平均が47.3%、都道府県別1位は東京都の57.7%で、実に半数以上が通塾している状況です。塾通いにいそしむ小学生たちは、どのような毎日を過ごしているのでしょうか。
進学塾に通うと帰宅はパパと同じ21時
中学受験用の進学塾では、19時半くらいまで授業を行うのがほとんどのようです。小中学生対象のアンケート調査によると、塾に通っている平日の帰宅時間は、「22時以降」が23%、「21時台」が20%と多く、小学生でもそれを月9回程度こなしているとのことです。
帰宅後に、夕食、入浴、就寝とすませて、また翌早朝から塾で勉強をする場合もあるというのですから、大人顔負けの過密スケジュールに驚いてしまいました!
夕食は10分休憩時に食べるお弁当か、おやつと帰宅後の夜食
育ち盛りのおなかの具合はどうなのでしょう。おやつを食べて帰宅後に夜食という家庭もあれば、塾での休憩時間10分程度で食べられるお弁当を持参する子どもも一般的なようです。空腹のまま勉強させるのは忍びないですものね。
一部地域では、子どもの孤食問題や栄養バランスを考える人たちによって、子どもだけで利用できる「食堂」(夕食を無料もしくは安価に提供しています)も用意されたりしています。ただ、慌てて食べるお弁当や、加えてとる夜食のことを考えると、塾のある日は少し不規則な食事になりがちでしょうか。せめて塾のない日は、家族と一緒にゆっくりご飯が食べられたらと思います。
睡眠時間は塾に通うと通わないで大きな開きが…
ご飯を食べてお風呂に入ったら、いよいよ夢の中へ!平日の就寝時間については、「22時までに」とする通塾小中学生が約45%。これに対し、通塾していない小中学生は約69%。「21時までに」となると、それぞれ約16%と33%となり、大きな開きが見られました。「放課後や休日はどのように過ごしたいか」という問いに、3割近い通塾小中学生が「家で寝ていたい」と回答するのも無理はないのかもしれません。
また、遅い時間の夕食や就寝は、翌朝の食欲不振や食事時間の不足を招きます。「“週に2日~3日”“週に4日~5日”“ほとんど”朝食を食べていない」とする小学生が、合わせて約1割もいるのが現状です。
塾に通っているのは何のため?
その状況に親も危機感を抱いています!
小学生の親の4割~5割が、「深夜や長時間に及ぶ塾通いにより、子どもの健康・体力・生活習慣に悪影響が生じている」
「遊び・地域活動・家族のふれあいなどの活動体験・生活体験が不足している」と感じていました。しかも、それが親の感覚だけではなく現実だとしたら、学力にも悪影響を及ぼしている可能性があります。
平成20年全国学力・学習状況調査の分析結果には「学力には基本的生活習慣と家庭での学習習慣が影響しており、学習習慣には家庭でのコミュニケーションが影響していることが明らかになった」ため「学力向上には基本的生活習慣と学習習慣の確立が重要」と記されていました。
また文部科学省も、子どもの生活習慣の乱れは学習意欲、体力、気力の低下の要因の一つであることを指摘しています。改善のためには、保護者が働いている企業の協力が不可欠であるとし、「各家庭で“早寝早起き朝ご飯”が実現できる働き方を!」と呼びかけています。
そもそも学力アップのための塾通いですから、生活習慣や家族との関わりが学力に大きな影響力を持つのであれば、勉強同様おろそかにはできませんよね!
親だからできること…
とはいえ、多くは子どもの希望あっての通塾です。小学3年生~6年生のどの学年でも、約6割が塾を「とても好き」「まあ好き」と答えていて、決して嫌々塾に通っているわけではありません。親には前述のような懸念はあるものの、小学生ともなれば一方的に親の判断を押しつけるのは難しいでしょう。学校+塾の生活は子どもにとって楽しい反面、「塾ありき」となって思いがけず子どもに負担を強いている場合もあるのかもしれません。
塾や習い事に通う忙しい子どもたちの増加は、家族と一緒に過ごす時間を阻む要因の一つになっているとの見方もあります。子どもの自我を尊重しながらも、勉強と健康、そして家族や日々の過ごし方と、バランスのよい生活が送れるよう上手にサポートしてあげられたらよいですよね。
【参考文献】
・第6学年及び特別支援学校小学部第6学年が調査対象
・都道府県別統計とランキングで見る県民性ホームページ
・上田淳子「パパッと塾弁」講談社、2007年2月
・文部科学省「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」
平成20年8月
・東京都教育委員会パンフレット「乳幼児期を大切に」2013年12月
・日本スポーツ振興センター「平成22年度 児童生徒の食生活実態調査【食生活実態調査編】」
・文部科学省「企業と家庭で取り組む 早寝早起き朝ごはん-社員向け啓発研修資料-」2012年8月
・ダイヤモンド社「週刊ダイヤモンド―息子・娘を入れたい学校2015―」
2015年8月号 藤原和博氏インタビュー
・内閣府「平成19年版 国民生活白書 つながりが築く豊かな国民生活」
2007年6月
naoko@Japan
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