(1)アメリカの消費量は減少傾向!!子どもに牛乳は必要か
(2)離乳期以降は牛乳を消化できない体に変わっていく?!子どもに牛乳は必要か
(3)牛乳摂取をやめたら自閉症が改善した?!子どもに牛乳は必要か
(4)牛乳が生産されるまで子どもに牛乳は必要か
(5)ひじきのカルシウム含有量は牛乳の14倍!~これからのカルシウム摂取を考える~
「牛乳信仰」をそろそろ見直しても良いのでは?!
「牛乳は栄養豊富な素晴らしい飲み物である」という理由から、日本では現在、学校給食においてほぼ毎日牛乳が出されていることはご存じの通りです。また、お弁当持参の学校でも、牛乳だけは毎日供給される、牛乳給食というものも存在しており、まさに私が通っていた公立中学校もそうでした。
この頃から「本当に牛乳は必要なの?」と思っていた私は、大学時代に牛乳をテーマとした論文をまとめたのですが、その時の知識は今の食生活の上でも大変役に立っています。
基本的にはまだ、現在の日本の栄養指導においては、牛乳がその栄養的価値を理由に高く評価されているのが現状です。しかしながら私たちは、「牛乳を栄養のために積極的に飲むべきだ」という考えを手放さなければならない時期にきています。
その理由を今回は、牛乳摂取による身体への負担という観点から詳しく見ていきたいと思います。
自然界で離乳期以後も乳・乳製品を摂取するのは人間だけ
離乳期を過ぎてもなお、乳・乳製品を摂取し続ける哺乳動物は人間以外に存在しません。離乳後に牛乳を飲むことは自然の摂理に反した行為であり、そのために、私たちの身体に様々な悪影響を及ぼすのではないかと指摘されています。
この主張を裏付ける理論として、「乳糖不耐症」の話があります。
日本人に多い「乳糖不耐症」
人間を含めた哺乳動物の乳汁には「乳糖」という物質が含まれています。(ただし、アシカ、アザラシ、オットセイ、セイウチのみ、乳糖やその他の糖質を一切含まない乳汁を分泌します。)
乳糖は乳腺の腺細胞でのみ作られるため、哺乳動物の乳汁以外に乳糖を含んでいる物質はありません。乳糖は「ラクターゼ」という特別な酵素がないと消化することが出来ないのですが、欧米人やモンゴル人など、長い間牛や山羊の乳を飲んできた民族を除き、多くの人は離乳期を過ぎるとラクターゼの体内活性が急速に低下します。
いわゆる、「乳糖不耐症」と呼ばれる状態です。日本人など、長い間牛乳を飲む習慣がなかった民族においてはその多くが乳糖不耐症なのです。
ラクターゼが低下=摂取の必要はない、ということ
身体の仕組みは本当によくできていますから、ラクターゼが身体の中で自然と作られなくなっていくということは、乳糖を含む食品は離乳後の人間には必要ないということにつながるのではと考えられます。
では、ラクターゼ活性の低い人が牛乳を飲むと身体の中ではどの様なことが起こるのでしょうか?
日本人が牛乳を飲むとどんな症状が起こる?
乳糖が腸管から吸収されて血液中に入っていくためには、ラクターゼによる分解を受ける必要があります。しかし、体内のラクターゼ量では処理出来ないほどの量の乳糖が体内に入って来ると、それらは分解されないまま大腸に送られていきます。
すると、乳糖は大腸内の腸内細菌により発酵を受け、乳酸などの有機酸やガスを生成します。有機酸は腸壁を刺激して腹痛を起こし、ガスは腹部膨満感などを引き起こします。また、腸管内にたまる水分の量が増えるため、下痢が起こるとも言われています。
これが日本人のおよそ9割に当てはまる乳糖不耐症の症状です。
牛乳は、無理やり飲ませるほどのものではありません
牛乳を体質的に受け付けられない子どもが、日本人の場合は特に多く存在しています。牛乳を飲むとお腹を壊す、というお子様は皆さんの周りにもいるのではないでしょうか。
しかしながら、学校給食においては牛乳が当たり前のように出され、嫌いな子も“がんばって”飲んでいます。一方、アレルギーなどで牛乳が体質的に合わず飲まない子ども達は、給食に毎回出される牛乳が原因で疎外感を受けるケースも指摘されているほど。
そこまでして子どもたちが給食で牛乳を毎日飲むべきなのか、考えさせられます。
次回も、牛乳摂取による身体への負担に関し、もう少し掘り下げていきたいと思います。
(1)アメリカの消費量は減少傾向!!子どもに牛乳は必要か
(2)離乳期以降は牛乳を消化できない体に変わっていく?!子どもに牛乳は必要か
(3)牛乳摂取をやめたら自閉症が改善した?!子どもに牛乳は必要か
(4)牛乳が生産されるまで子どもに牛乳は必要か
(5)ひじきのカルシウム含有量は牛乳の14倍!~これからのカルシウム摂取を考える~
【参考文献】
・内山葉子『子どもの病気は食事で治す』評言社、2015年。
・佐藤章夫「日本人と牛乳」『産業医学ジャーナル』2005年9月号。
・フランク・オスキー著、弓場隆訳『牛乳には危険がいっぱい?』東洋経済新報社、2003年。
・土屋文安『牛乳読本』NHK出版、2001年。
By Kocchi
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