モザンビークで人気の「マリア」ビスケット
モザンビークで大人や子どものおやつといえば「マリア」というビスケット。スーパーで買い物客が2個も3個もカゴに入れるのをよく見ます。味は非常に素朴でバニラフレーバーの優しい甘みと香り。好きな人は一口食べれば止まらないといったところです。
たった45円で30枚強も入っており、カロリーも高く、とてもコストパフォーマンスの良い食べ物だといえます。元はイギリスのお菓子メーカーが皇室の結婚を記念して作ったそうで、とりわけスペインでは同国内戦以降の小麦の大量消費により、マリアビスケットは国の経済回復の象徴になったそうです(ウィキペディアより)。
このビスケット、様々な会社がマリアやマリーという名前で、世界中で販売していますが、モザンビークの場合は、モザンビークやポルトガル、南アフリカで作られたマリアが食べられます。
モザンビークのスーパーマーケットで数多く陳列されている「マリア」
低価格帯商品がもたらす途上国の労働問題
さて、そのビスケットですが、ここまで人気があるのはやはりその価格。ポルトガルのビエイラ・デ・カストロ社によると「徹底した製造過程の自動化」により生産性を高めたそうです。それによる低価格帯商品の実現。
この「低価格帯」という言葉、最近日本でも問題になっていますよね。つまり、低価格帯がもたらす「途上国の労働問題」です。一番有名なのは「ファストファッション」でしょうか。低価格帯商品=途上国の労働者による劣悪環境での労働、というイメージから、これをなくすために不買運動に発展することもあります。
環境は悪くても夜間仕事よりはずっとまし
私のモザンビーク人の友人は、以前、某お菓子工場で働いていました。危ない機械もあり指を切ってしまった同僚もいたそうです。労働環境は決して良い状態ではなかったようです。彼女は妊娠により退職になってしまったのですが、こう言っていました。
「あの工場で働いている間は良かった。日中に働けたし、給料もちゃんと出た。その後は、バラッカ(立ち飲みスタンドの様な物)で夜間に働く仕事しか見つからなかった。夜の仕事はつらかった」。
モザンビークの町並み
更に「公立施設の清掃などで働きたいけど、いつ載るかも分からない求人のために新聞を毎日買うわけにもいかない」と(新聞一部でパンが一つ買えます)。
劣悪環境でも働きたいと思う国民がいることが一番の問題
私はこの話を聞いたとき、今までの「低価格帯商品はすべてが悪」という考え方が少し揺らいでしまいました。友人のように10代半ばで出産し、学歴がそこで止まっているような状態では仕事を探すことが非常に難しいのが現状です。
もちろん個人の責任といえばそこまでですが、途上国では個人的理由の他にも、家計を助けるために学校に行けない子や、性犯罪で望まない妊娠をしてまったり、事実婚で男性が逃げてしまうケースも。国からのフォローはなく、国民はあまり守られていません。
1本1,000円以下のジーンズや1袋45円のビスケットの値段にする背景には、安価な労働や、徹底した製造過程の自動化による労働の機会の減少があります。安価な仕事はかわいそうだ!と思われるかもしれませんが、その工場で働きたいと思う人がいる限り、その価格で製造し続けることは可能だと思いますし、その値段で販売し続けることも可能でしょう。
モザンビークの加工業の最低賃金は2016年の4月に少し値上げされたもののひと月たったの5200mt(6760円)、パン製造で3985mt(5180円)です(在モザンビーク日本大使館より)。
モザンビークの紙幣
ネットで話題になっているような建築基準を無視したような工場や、汚水を垂れ流すような工場は論外だと思いますが、劣悪な環境ででも働きたいと思うような国民がいることが一番の問題であり、そこに対し『私たちは何ができるか』というのが一番考えたいところです。
不買運動だけではなく、日々の消費の見直しを
それは、ただ不買運動をすればよい、というのは違うと感じています。
現地の人々がビスケットを手に取る度に、そのビスケットがどこからやってきて、どのようにその値段で売られているか考えずにはいられません。
安いがゆえに大量に消費されて、消費されるあまり、大量に生産されるビスケット。その大量生産された商品に伸ばすその手が、実は誰かの働く環境に影響していることを考えれば、自分の消費そのものを見直す機会になるかもしれません。
totuku@Mozambique
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