前回の記事(日本発!こども食堂に行ってみよう②~子どもを取り巻く3つの貧困とは~)では、子どもを取り巻く3つの貧困について触れました。子ども食堂を通して、子どもを支えていこう、という取り組みは全国に広がっています。今回は、その成果と課題について考えてみたいと思います。
子ども食堂の成果~親の支援のきっかけにも~
子どもたちがこども食堂に行くことによって、栄養バランスのとれた食事を食べ、大人数での「団らん」の楽しさを経験し、社会とのつながりを感じられることは、心身ともに有意義で、第一義的なわかりやすい成果です。
加えて、こども食堂が子どもや親に関する支援のきっかけづくりとなって成果を上げてもいます。
「住民性」を大事にしているこども食堂には、子どもやママが安心して困りごとをつぶやける空気に満ち溢れています。行政窓口には相談に行きにくくても、「ご飯食べにおいでよ」であれば行きやすい、そんな気軽さもありそうです。
問題が深刻な場合は専門家とも連携
ご飯を食べた後に、スタッフに金銭や進学の問題、離婚やいじめの悩みなどをぽろりと話す。話すことで楽になることもあるし、「またおいで」と言ってくれる場所があることは、親にとっても辛い時の精神的な支えになります。
問題が深刻な場合は、本人の了承のもと、行政や弁護士などの専門家と連携をして解決にあたることも実際に行われています。
学習支援との連携
あるNPO法人は、こども食堂を行う傍ら、近隣にいくつかの拠点を構えて、プレーパーク(遊び場)の提供、無料学習支援、シングルマザー交流も行い、複数の観点で支援を行っています。
そのうちの無料学習支援に携わる弁護士は、こう書かれていました。
「貧困の連鎖を断つためにも、子どもたちが将来自立して生活できるだけの学力や知識を獲得していくことは必要。勉強が苦手、費用がなくて塾には通えないという子も、プレーパークやこども食堂にきているつながりで、学習支援にきてほしい。」
逆に、学習支援にきている子がこども食堂でご飯を食べて帰るなどの連携もあり、包括的に子どもを見守る体制ができつつあります。
子ども食堂を取り巻く課題とは?
一方で、課題もあります。
その1:不定期開催により、子どもたちが求めているときに開いていない
1つは開催頻度。現状では月2回くらいの開催が多く、開催側の都合で不定期開催という地域も少なくありません。まず、月数回の開催では、欠食の根本的解決にはなりません。
それ以上に、子どもと信頼関係を築き、抱えている問題に対する支援を行うためにも、「地域の子どものための食堂なので、大人の都合に合わせて開催可否を決めるのではなく、決まった曜日や時間に、継続的に開催してほしい」と、こども食堂を運営するNPO法人は言います。
助けを求めにやってきたのにいつもの日時にやっていなかった、というのでは、支援に繋がりません。ボランティアで行っているとしても、支援を求める子どもにとっては重要な意味のある場所。責任の重さも感じます。
その2:自由な体制を維持するために費用は開催者の負担が大きい
もう1つは、費用負担です。
住民主導、ボランティア精神で運営されているこども食堂は、金銭や現物の寄付、好意の場所提供などで切り盛りしている場合が多いようです。
一方で、行政からの補助金や助成金を受け取って運営するのは安定性があるものの、行政の委託事業となって内容に制限を受けたり、こども食堂のきもである住民性が発揮できなくなったりする可能性があるので、なかなか踏み切れない…。
実際に金銭の補助を受けているこども食堂もありますし、行政とは情報の共有やネットワークづくりで協力していきたいという団体もあり、それぞれのこども食堂で試行錯誤を重ねているようです。
食を通して子ども達が安心できる居場所作りを
子ども食堂は、子ども達の良いところも悪いところも、全てをひっくるめて受け入れてもらえる場所。子どもにとって「自分はここにいていい、今のままで存在する価値がある」という安心感と自信につながります。
「食事」は、育ち盛りの子どもにとって、バランスの良い食事が必要であることはもとより、食事を通じた学びの場、コミュニケーションの場でもあります。
日本では、食の重要性を謳った「食育基本法」が2005年に成立し、子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためにはなによりも「食」が重要であると、食育の普及に力を入れてきました。
身近なところにも、きっと子ども食堂はあると思います。自分にできることはないか、一度お話を聞きに行ってみるのも良いかもしれません。
また、「子ども食堂」とまでいかなくても、近所の子どもを家に呼んで一緒にご飯を食べる、食材をおすそ分けする、といった地域交流でしたら、私たちにもできそうです。まずはご近所同士、仲良くなって支えあっていけたら、子育てに悩む大人も不を抱える子どもも、ほっと笑顔で暮らしていけるそうですよね。
「日本発!こども食堂に行ってみよう①~子どもを取り巻く3つの貧困とは~」はこちらからお読みください。
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