これまで就学前の子どもに本の読み聞かせをすることの大切さを紹介してきました。
では、就学後の子どもたちにはどうでしょうか。もちろん、低学年のうちは本の読み聞かせを続けていけたらいいですね。そして、親から本の読み聞かせと同時に、子どもたち自ら本を読み上げていく、つまり「音読」も大切になっていきます。
小学生の時に学校で誰もが経験したことがある「音読」。面倒くさいなと思う子もいると思いますが、「音読」には「黙読」とは違う別の効果があるのです。私は、この「音読」を、時間があるときに家庭で取り入れてきました。
今回は、この音読の大切さについてお伝えしたいと思います。
<就学前のお子さんに向けた記事はこちら>
音読と黙読の違い~音読で脳を活性化!~
音読はインプットとアウトプット作業
音読とは「声に出して読む」ということですから、この行為の中には、見る、話す、聞く、という少なくとも3つ機能を使うことが含まれています。人間の脳は、見たり、聞いたり、感じたりすることで脳を活性化させ、言葉を理解し、覚えます。音読は視覚からの刺激だけでなく、聴覚からの刺激を同時に使うわけですから、黙読のように視覚からの刺激だけで言葉を覚えるよりは効率がよくなります。
また、声に出して読むということは、「インプット」だけでなく「アウトプット」という要素が入ってきます。「インプット」は受動的な学習方法で、聞く、読むといった作業です。反対に「アウトプット」とは能動的な学習方法で、話す、書くなどがあります。人は、自らが手に取ったり、作ったりする「アウトプット」をすることで、より強く記憶に残ると言われています。
そして、音読は1つ1つの言葉を読まないといけないので、黙読でするような飛ばし読みはできなくなります。丁寧に読まなければならない音読という行為は、子どもたちにとって、言葉を理解し、覚えるという意味でとても意義のあることなのです。
黙読はインプット作業
一方、黙読とは「声に出さないで読む」ということで、視覚からの刺激のみになります。そして、黙読には音読のような「アウトプット」はなく「インプット」のみになります。声に出して1つ1つ言葉を読む音読と違って、飛ばし読みをすることができますから、読むスピードが速くなります。また、本の中から大切な情報を読みとるという訓練になります。必要な情報を得て全体を理解し、早く読むという黙読も、子どもにとっては大切なことです。
家庭での音読を通してアクセントや理解度もチェック!
日本人の家庭の子どもなら、学校で音読をする機会が必ずあるでしょう。上でも述べたように、学校の先生が生徒に音読をさせるということは、脳を刺激させ、言葉を理解し、覚えるためにとても役に立っています。もしバイリンガルの子どものように、学校で音読するという機会がないならば、ぜひ、家庭で音読を取り入れてみてください。子どもは目で見て理解しているつもりになっていても、音読してみると、その発音が違うことがあります。
本を黙読しているだけでは、言葉がどんな発音なのかわかりません。特に日本語には高低のアクセントがあり、地域によっても違うと思いますが、視覚からだけではそれは読み取れません。私の子どもたちは日本語の本から日本語の語彙を習得することがあるのですが、会話の中でよく、アクセントが違うことがあります。気づいたときは、言い直して、正しいアクセントや発音を聞かせます。
また、なんとなく理解してしまっている言葉も、その読み方からちゃんと理解できているのかな?ということに気が付くこともできます。そういう意味でも、先生の前や親の前で音読するということは、バイリンガルでもモノリンガルの子どもたちにもとても大事なことなのです。
思考力の土台は語彙力!家庭で気軽に音読を取り入れてみましょう
私の子どもたちは小学生に入ってからもしばらく、毎日の読み聞かせを楽しみにしていました。本を読んでとせがまれたときは、子どもたちに音読をさせるチャンス。今度は子どもたちが先生になったつもりで私に読んでとお願いしました。子どもたちが音読をすると、私が読んだときとは違ったストーリのとらえ方や疑問が次々と出てきます。
つまりそれは、読み聞かせの時には、見る、聞く、という2つの機能しか使わなかった子どもたちが、音読で、見る、(自分の声を)聞く、話すというアウトプットとインプットを行ったことで、脳がより活性化されたということです。
「語彙力が思考力に繋がる」とも言われており、声を出して本を読む、ということだけでも、その語彙力の蓄積は大きな力になります。
文部科学省が掲げている「国語教育における重点の置き方」のイメージからもわかるように、語彙力が土台にあって、思考力や想像力が成り立ちます。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/toushin/04020301/007.htm (文部科学省)
また、ベネッセのアンケートから、語彙力が高い人は論理的思考力が高い傾向にあることがわかります。
https://www.benesse.jp/kyouiku/201710/20171013-1.html (ベネッセ教育情報サイト)
つまらないと思われがちな音読ですが、この語彙力の基礎ができてはじめて、コミュニケーションや思考に繋がっていきます。それは日本語でも外国語でも同じです。本が一冊あればどこでもできる音読。是非、ご家庭で取り入れてみてはいかがでしょうか。
mao
海外在住歴15年。子どもたちがバイリンガルで育っていく姿をみて、自らバイリンガル教育について理解を深めたいと思い、30代で大学院に通い始め、2016年にやっと言語学博士号を取得。現在、中学生の息子と小学生の娘を連れて親子でドイツ留学中。
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