前回の「絵本の「読み聞かせ」を日常に取り入れて視覚刺激から文字の習得を~バイリンガル子育て1~」では、文字習得に大切な視覚刺激の環境は絵本で用意することができるということについてお伝えしました。
今回は、「語彙力」についてです。
国際結婚家族での言葉の使い分け方
バイリンガルで子育てをする場合、場面や話し手によって言葉を使い分けることが推奨されています。例えば、日本人家庭の場合は、家庭では日本語を、学校や社会では別の言葉を使用するというように、場面によって言葉を切り替えていきます。
国際結婚の家庭では、片方の親がその母国語を使用し、もう一方の親がその母国語を使用するというように、1人一言語の形式をとったほうがいいとされています。子どもは場面や話し手によって言葉を切り替えていくことで、場面または話し手と言葉を結び付けていきます。
たとえ、片方の親が両方の言葉ができるとしても、子どもの前では常に一つの言葉で接する努力をします。子どもとの会話の中では、2つの言葉を混合させないということがとても重要になってきます。そして、混合させないだけでなく、様々な言い回しや完結した文章を意識して使うようにしていくことは、語彙力を高めるためにとても大切です。
バイリンガルを持つ親が子どもの就学前までにしておきたいこと:語彙力
バイリンガルで育っていく子どもは、モノリンガルで育っている子どもに比べて、語彙力がどうしても劣ってしまいます。モノリンガルの子どもは、家庭で使われる言葉と、学校や社会で耳にする言葉の2つの場面で語彙を増やすことができます。
例えば、家庭では“お箸を並べる”や“お布団をたたむ”“洗濯物を干す”というような会話を耳にするでしょう。学校では“列になって並ぶ”や“下駄箱で上履きに履き替える”というような家庭では使わない言葉を耳にします。しかし私の子どもたちのように、家庭では日本語、学校では別の言葉というように2つの場面で使われる言葉が異なる場合、“下駄箱”や“上履き”などのような家庭ではあまり使われない日本語に触れることができません。
特に就学後は、子どもは学校や社会で過ごす時間が増えるため、そこで使われる言葉の方が上達し、また、その言葉がバイリンガルの軸になる言葉となります。ですからバイリンガルで子育てしている親は、子どもが就学する前までに、できるだけ日本語の語彙を増やしていくことが望ましいように思います。
それではどのように語彙を増やしていけばいいのでしょうか。前回ご紹介した子どもへの本の読み聞かせは、語彙力を高めるためにもとても役に立ちます。絵本の中には、普段会話の中では使わないような言葉がたくさん含まれています。例えば、昔話の中には、“てぬぐい”や“ぞうり”というような言葉でてきますね。子どもは、知らない言葉がでてきても、親の言葉と絵を見て、自然に理解できます。そして、理解できた言葉は、子どもの語彙という“引き出し”にどんどんたまっていくのです。
オノマトペの大切さ
また、絵本には言葉を豊かにするたくさんのオノマトペがでてきます。オノマトペとは、国語でいう擬声語で、擬音語、擬態語の総称です。擬音語は、音や動物の鳴き声、人間の声を文字で描写した言葉です。例えば、犬の鳴き声の“ワンワン”や雨が降る音の“ザーザー”などです。
擬態語は、状態、動作、心情など音がしないものを、音にして文字で描写した言葉です。例えば、疲れている時の“フラフラ”や心配している様子を表す“ハラハラ”など。日本人なら何気なく使っているこのオノマトペは、実は日本人らしい日本語を話すために必要な語彙なのです。そしてこのオノマトペは、外国語として日本語を習う学習者にとっては習得が難しいと言われており、つまりそれは、子どもの時にたくさんのオノマトペを感覚的に触れることが大切ということなのです。
私は、家庭で日本語を話す人が私だけということもあり、できるだけ長い文や様々な言い回し、オノマトペを使って子どもに話しかけるようにしました。また、小さな子どもとの会話は、何を話して良いかわからないこともあると思いますが、そういうときこそ、絵本を読んで会話をするのが一番の解決方法です。
絵本の選択では、私や子どもが選ぶと偏ってしまうので、幅広いジャンルの本が読めるように福音館書店の「こどものとも」を定期購読していました。毎月違う本が送られてきますので、親子ともども、次にどんな本が来るのか待ち遠しくなります。そこで出会った本が気に入れば、同じ作者さんの違う本を読んでみたり、シリーズで読んでみたりしました。図書館に通うということも習慣化できたらいいですね。
バイリンガルでも、モノリンガルでも、「語彙力」を小さいうちから養っておくことは後々大きな力になります。言葉が豊かになる語彙力、ぜひ読み聞かせで広げてみませんか?
Mao
海外在住歴15年。子どもたちがバイリンガルで育っていく姿をみて、自らバイリンガル教育について理解を深めたいと思い、30代で大学院に通い始め、2016年にやっと言語学博士号を取得。現在、中学生の息子と小学生の娘を連れて親子でドイツ留学中。
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