出産祝い金から放課後クラブまで〜東京23区の様々な子育て支援:2018年版〜/日本

前回は東京23区の出産に関する補助金についてご紹介しましたが、今回は、出産後の経済的子育て支援も視野に入れながら、東京都23区を中心にご紹介します。
日本では、「子ども・子育て三法」の整備や「働き方改革」の実現に向けた取り組みが進められ、2019年4月からは3~5歳児(所得により0~2歳児も含む)の幼児教育・保育が無償化されることも閣議決定されました。
他にも、待機児童解消にむけ幼稚園にも保育機能を求めたり、子どもの相対的貧困に焦点が当てられたりと、これまで以上に、国として子育て世帯の働き方や子育て支援に注目が集まっているように感じます。今回は東京23区の様々な取り組みを見て行きたいと思います。

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妊婦さん、安心して出産してください!

東京23区妊婦への支援
出産はゴールではなくスタート。そしてそれは赤ちゃんを授かった瞬間から始まります。妊婦の時から継続して見守ってもらっていると、安心感がありますよね。

葛飾区の5,500円分PASMO配布

例えば葛飾区では、「自転車での外出が難しくなる」「体調の変化等で外出が減りがち」との声に応え、2017年4月1日以降に母子手帳を発行した妊婦さんから、5500円分をチャージ済みのパスモを配布し始めました。これは都内で初の試み。同区育成課課長も「子どもを安心して産み育てられるような環境を作り、出生数を増加させていきたい」と意気込みを語ってくれていました。

杉並区の「ゆりかご応援券」と「子育て応援券」

杉並区では、出産前の家庭に10,000円分の「ゆりかご応援券」を、さらに「子育て応援券」として、出産時に20,000円分、0~2歳児のいる家庭に20,000円分の応援券が無償で配布され、杉並区が認めた育児サービス等に利用できる仕組みになっています。
サービスの一例としては、「親子で楽しむリトミックなどの地域での交流事業」「親をサポートする家事援助や育児相談」「ベビーシッターや保育施設での一時保育など子どもを預けるサービス」「インフルエンザ予防接種」などがあり、おむつやミルクなどの子育て必需品の購入などに使用できるわけではありません。
しかし、このようなサービスに限ってもらうことで、親が一人で育児やその悩みを抱え込まないように配慮し、地域で子育てを行っていこうとする区の姿勢が垣間見えます。
しかも、応援券が足りなくなった場合は、10,000円分の券を3,000円で追加購入できるのも嬉しいですね。

渋谷区の「ハッピーマザー出産助成金」

また、前回ご紹介した以外にも出産に対する補助金を出している区はあります。
渋谷区では、1人の出産につき「ハッピーマザー出産助成金」が、10万円を限度額として支給されていることがわかりました。

練馬区は第三子以降20万円の出産補助金が

練馬区においては、第3子以降の出産1人につき20万円もの支給が!子どもをたくさん産みたい人には喜ばしい制度な上に、少子化対策にもなりそうです。

出産後は、母子ともにケアが必要

東京23区産後の支援
出産直後、お母さんは体力的に疲れますし、初産の人は慣れるのに必死だったり、経産婦さんでも兄弟のいる新しい環境で両親ともにバタバタしたりするものかと思います。親子にとって、適切なケアが必要ですよね。

東京23区は中学生相当時期まで医療費が無料

とかく子どもが小さいうちは体調を崩しがち。赤ちゃんが辛そうに泣いて訴えるだけだと、心配でつい受診が増えてしまうのも一人の親として頷けます。
日本では、未就学児の医療費自己負担額は2割ですが、東京23区は各自治体によって自己負担額が補助され、中学生相当時期まで全て無料となっています。
さらに調べてみると、千代田区は、高校卒業相当時まで医療費の自己負担を助成していますし、北区では、入院医療費を同じく高校卒業相当時までを無料としていました。
また渋谷区は、任意接種となっている「ロタ」「おたふくかぜ」「麻疹風疹」「インフルエンザ」の予防接種に対して、ほぼ全額が助成されています。(但し、接種をするかどうかは、できる限り自分で判断して考えていきたいですね!The World’s Mother Salonでは、先日「ワクチン接種は本当に必要?横地真樹先生のワクチン講座」を開催しました。)
子どもの医療措置に関して、経済的な援助があるのは心強いですね。

杉並区や板橋区の親を対象とする支援

先程ご紹介した杉並区の「子育て応援券」のように、親がゆっくり休めるサービスが無料や安価に使えるのもありがたいものです。
杉並区以外でも、練馬区では「子育てスタート応援券(8枚)」を、板橋区では「すくすくカード(6枚)」を配布し、育児支援や家事の手伝いなどに利用できるようになっています。
さらにすくすくカードは、赤ちゃんカフェやフォトスタジオ、区立美術館などでも利用できるので、赤ちゃんと一緒のお出かけの幅が広がって、お母さん同士の交流や気分転換にも使えそうでした。

働く親の支援も進めています!

東京23区働く親への支援
従来の経済的援助に加え、共働き世帯が専業主婦世帯の倍近い数となった今(2016年現在)、親の労働を支援するという形での体制づくりも見逃せません。

共働き子育てしやすい街3トップは豊島区、港区、渋谷区

情報サイト『日経DUAL』は、日経経済新聞社と共同で実施した調査をもとに「共働き子育てしやすい街ランキング2017」を発表しました。
堂々の第1位は「豊島区」。以下、「港区」「渋谷区」と続く結果となりました。
ランキングにあたり、最も重視したのは「保育園への入園可能状況」「子育て・教育費」「学童保育の整備状況」の3点ということですが、豊島区は、日本創生会議によって23区内唯一の「消滅可能性都市」(今後20~30代の女性の人口が半減し、人口を維持することができない可能性が高い街)と指摘されたことをきっかけに「女性に優しい町づくり」に力を入れた結果、2017年4月には待機児童ゼロ(国基準)を達成したことなどが評価されたとのことです。
さらに2020年まで保育施設を毎年最低10園は作り続け、保育定員を600名ずつ増やしていく計画を区長自ら語っており、今後も子育てと仕事の両立の支援策にまい進していく姿勢を見せました。
また上位10位中、東京以外の自治体としてランクインしたのは千葉県松戸市のみで、市内全23駅の駅ビル・駅前に小規模保育所を設置したことなどが評価の決め手となったようです。

子育てしやすい街、治安部門は杉並区、江東区

一方で、「治安」に「子育て制度の充実度」を加えた「働く母必見!東京で子育てしやすい街ランキング【決定版】」によると、西部では「杉並区」、東部では「江東区」がそれぞれ1位を獲得していました。確かに、親の不安の1つといえば、目が届かない時の子どもの安全が挙げられますよね。
一概に「共働き」「子育て」といっても、状況や方針などは家庭によって千差万別、生活において重視する点も様々です。自治体ごとの特色がみられる中で、自分たちに合った環境を探していくことも大切かもしれません。

学童保育が充実している区は?

また先の話になりますが、学童保育についても少しだけ。
なんと、渋谷区が実施している「放課後クラブ」は、親の就労状況にかかわらず、全児童が無料で利用ができる(おやつ等の実費負担はあり)システムとなっています。
利用料金は自治体によって様々ですが、全児童を対象とした放課後保育については、文部科学省と厚生労働省が連携して進めているいわゆる「全児童対策事業」(児童が放課後等を安全・安心に過ごすことを前提とし、次世代を担う人材育成の観点からは、全ての児童が多様な体験・活動をできるように放課後対策を講じる必要があるとして、その受皿を整備していこうとする事業)の一環を実現したもので、中央区、江東区、品川区、世田谷区、板橋区、葛飾区、江戸川区なども実施しています。
このような制度をうまく活用できれば、子どもたちの世界も広がり、地域での関係性が密になって安全性も高まるように思います。

日本の子育て支援は少しずつ進んでいる?

東京23区内だけでもいろいろな支援がありましたね。各自治体による工夫も感じられ、頼もしい限りでした。
このように一見手厚くなってきたように見える支援ですが、日本における「子ども一人当たりの子育て支援支出」をみると、「先進26か国平均のわずか半分しか使われていない」というデータがあり、それに加え、「同国中3番目に子どもの貧困率が高い」というデータがあります。
それを受け、現状、高齢者支援が平均的水準に増えてきた一方で、日本は「現役世代向け社会保障の拡充」を疎かにし、政府は子どもの相対的貧困を放置してその数を増やしてきた、と分析する専門家もいます

子どもの貧困対策が急務

子どもの貧困対策が急務
貧困状態にある家庭や子どもを最も早く救う手段として、低所得層の親たちに対する現金給付の反感「現金給付アレルギー」を超えて、貧困状態の人々にお金を動かしていくことが絶対に必要であるとする専門家や、少子高齢化対策として、第3子以降を出産の場合には、塾代も含めた大学進学までの教育費1000万円程度をすべて無料とするぐらいの大胆な支援をしてもよいのではないか、とする専門家もいました。
内閣府の調査でも「親が貧困である場合、子どもが抑うつ状態になりやすく、学業成績も低くなりがちで、将来に相対的貧困に陥りがちである」いう結果が出ており、子どもの相対的貧困は早期解決が必要な見過ごせない問題ではあります。
「少子化対策に待ったなし」と言った政治家がいますが、それぞれの子育て世帯にとっても「子どもの成長は待ったなし」
国という大きな船のかじ取りは、時間をかけなくてはできない面もあるかと思いますが、子育て世帯への適切なサポートや誰でも安心できる出産・子育ての実現、ひいてはよりよい社会を築いていくためには、有効な対策にもスピード感が求められるのかもしれません。
小回りの利く私たち個人もできることを考えて、少しずつでも行動を起こす必要がありそうです。
By naoko@Japan

参考文献

毎日新聞「幼児教育無償化19年度に先行実施 閣議決定」2017年12月9日付け
産経ニュース「幼稚園で2歳児受け入れ 長時間の「一時預かり」枠新設 待機児童解消へ文科省など認可方針」2017年9月18日付け
朝日新聞「東京)葛飾区が「マタニティーパス」 妊婦の外出支援」2017年2月18日付け
公明新聞「きょうから交付開始 マタニティパス」2017年10月30日付け
・ハッピーマザー出産助成金 | 渋谷区公式サイト
・子どもの任意予防接種|渋谷区公式サイト
放課後クラブ | 渋谷区公式サイト
杉並区ホームページ
厚生労働省ホームページ「医療費の自己負担」
独立行政法人労働政策研究・研修機構ホームページ「専業主婦世帯と共働き世帯 1980年~2016年」
日経DUAL「共働き子育てしやすい街2017 上位50自治体は」2017年12月11日
江東区ホームページ
日本創生会議ホームページ
マイナビニュース「共働き子育てしやすい街ランキングが発表 – 先進自治体は何が違う?」2017年12月1日付け
東京都23区の治安ランキングホームページ2017年版「働く母必見!東京で子育てしやすい街ランキング【決定版】」
文部科学省・厚生労働省「「放課後子ども総合プラン」について」
「「放課後子ども総合プラン」について」PDF
・柴田悠「子育て支援が日本を救う」勁草書房、2016年6月
・池田香代子「世界がもし100人の村だったら お金編 たった1人の大金持ちと50人の貧しい村人たち」マガジンハウス、2017年1月
~みわよしこ「日本のこどもの貧困を解決する一番確実な方法」
産経新聞「少子化対策 75%が「第2子の壁」 第3子に「1000万円」支援を」2015年6月23日付け
内閣府「平成23年度「親と子の生活意識に関する調査」」
SankeiBiz「少子化対策「待ったなし」 小泉氏「こども保険」実現に意欲」2017年6月2日付け
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