これまで、日本の子ども達を取り巻く性の現状や子どもへの伝え方について見てきましたが、海外で性教育はどのように扱われているのでしょうか。
今回は、中国における子どもの性犯罪の背景や教育内容について見てみましょう。
小中学生への性的暴行事件、2016年の被害児童は778人―公開されているのは氷山の一角―
女児を守る基金である中国少年児童文化芸術基金が発布した<2016年児童性的暴行統計及び児童性的暴行を防ぐための教育調査報告>の最新の調査によると、2016年に中国全土で報道された児童への性的暴行犯罪(14歳以下)は433件、778人の児童が被害にあっており、その内の7割近くは知り合いからの暴行であることが明らかになりました。
明確な記述がある300件の犯罪の中で、割合が高い方から順番に見てみると、先生(27.33%)、隣近所の人(24.33%)、親戚(父母の友達を含む)(12%)、家族(10%)となっています。
2015年と比べ、通報された件数は27.35ポイント増加しているものの、専門家の分析によると、性的暴行犯罪、とりわけ小中学生に対する性的暴行犯罪は、1件報道されれば、7件の犯罪がすでに起きているとのこと。公開されている犯罪は氷山の一角にすぎません。
そして2016年に被害を受けた子どもの年齢は、最も小さい子で2歳、そして12歳から14歳が57%と最も高い比率を占めていました。
上記のデータからも分かる通り、7件中6件の犯罪が隠蔽されているということは、つまり、性被害を受けた児童の大多数の親が警察へ届けることを選択せず、隠してしまっているということです。恥ずかしさや、自分の子どもに責任があるとさえ感じてしまうからです。
7割の親が性被害から身を守る教育を受けさせていない。その理由は?
中国少年児童文化芸術基金による中国全土31省の9,151人の親にアンケート調査によると、児童の性被害から身を守る教育の現状を分析したところ、7割近くの親が性被害から身を守る教育を子どもに受けさせていないということが、調査で明らかになりました。
その理由は、小さすぎる(37.98%)、どのように教えて良いか分からない(34.30%)、学校で教えてもらっているから(12.40%)、教えることで子どもに悪影響を与えるのが怖い(9.82%)、恥ずかしい(5.51%)という理由が挙げられています。
大人は、性は不純なもので、表に出すものではないと思っており、性教育に関しても軽く受け流しているのが現状です。正確な性教育を受けることが非常時に自分の子どもを守るころができることに繋がる、ということが理解されていません。
変わり始めている学校教育―性犯罪から身を守る方法も―
性教育は、家庭教育以外に学校教育も必要不可欠な部分です。しかし、性教育は各学校の判断にゆだねられている状況です。
私自身は中学生の時、学校で性教育の授業がありましたが、その方法がおかしかったことを覚えています。学年の男女別に2つの大講堂に集められ、男子は主に男子の部分を聞き、女子は主に女子の部分を聞き、その他は帰宅してからそれぞれ自分で学びました。
しかし、近頃は、性被害の増加や性行為が低年齢化していることもあり、性教育の教材や教え方も変わってきているようです。以前の性教育授業のようにただ生殖器官と成長過程を説明するだけではなく、内容を簡単で分かりやすくし、性犯罪防止や自分の身の守り方についても触れられるようになりました。
(中国の小学校二年生で使われている教科書)
保護者たちはこのような性教育の授業に関して、反対よりも賛成派が多数。保護者自身も徐々に性教育の重要性を理解してきています。多くの親が賛成し、さらに学校側へ子ども達に対して積極的に性教育をするよう要求しています。それは、以前のような本を渡して、家で自習しなさいというような教育ではありません。
親、学校、社会全体で子ども達を守っていくことが最重要任務
児童の性被害減少のためには、学校や家庭教育以外にも法律や心理的ケアシステムが充分である必要があります。中国では児童保護に対する専門的な司法部門がなく、性被害に遭っても当事者が恐ろしくなり、どうすればよいのか分からず、直接警察へ行って被害を伝える方法はありません。そのため知らせる機会を失い、心理的負担を負い続けることになってしまいます。
ですが、もし秘密を守って保護してくれるような専門的な児童保護の司法部門があれば、状況は変わってくるはずです。
インターネットが日に日に発達し、様々な情報が容易に得やすくなっています。飲食や環境の変化により、青少年の生理的発育もどんどん速くなっている中、子ども達が自分で自分を守れる知識を充分に与え、助けることが、親、学校、社会の最重要任務だと感じています。
《参考资料》
中国少年儿童文化艺术基金会女童保护基金在京发布《2016年儿童性侵案件统计及儿童防性侵教育调查报告》
yuki@china
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第一弾
【子どもと性】性教育は学校任せでいいの?学校教育の現状を見てみましょう。
第二弾
【子どもと性】児童買春、児童ポルノ、中絶、性感染症の低年齢化―偏った性情報が子どもを被害者に
第三弾
【子どもと性】自分の命、他者の命を大切にすることに繋がる正しい性の伝え方
以前掲載しましたドイツの性教育の記事も合わせてお読みください。
【子どもと性:ドイツ】生物の授業で性について学ぶー自然に考える機会を子ども達にー
日本とは違った角度から、具体的に正しい知識を与えようという試みが新鮮です。
その他、日本の性教育や性犯罪の現状から海外の性教育事情について、様々な視点で情報を配信しています。
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