激化は止まるか?!日本の保活

『保活』という言葉、働くママにとっては大きなプレッシャーとなっているのではないでしょうか。待機児童問題は日本ではもう長いこと課題として挙げられていますが、なかなか改善の兆しが見えません。この状況を打開する方法はあるのでしょうか?

“保活”ってなに?

「保活=子どもを保育所に入れるために保護者が行う活動。…待機児童が多数いるため、…涙ぐましい努力をしている保護者も多い。」(現代用語辞典『知恵蔵』より)
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雑誌『AERA』が最初に使ったのが2012年。今や働くママや妊婦さんの間ですっかり定着した趣があります。そもそも、児童福祉法第24条で「自治体の保育の実施義務」が定められているにもかかわらず、なぜ今、特に都市部では“必死な保活”が必要なのでしょうか。

背景の一因には女性の労働力活用が

1996年から生産年齢人口[1]が減少に転じ、労働力確保のため、女性の労働参加が注目され始めました。「保育施設の整備」「柔軟な働き方が認められる職場環境づくり」「ワーク・ライフ・バランスの向上」などの施策が講じられ、その効果もあったのか、1997年以降は共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回るようになり、2014年時点では専業主婦世帯の約1.5倍[2]に。
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しかし働く女性の増加に対して、保育所は「建設期間」「莫大な費用」「保育士確保」など様々な理由から定員を一気に増やすことが難しく、結果として、保育園に入所できない“待機児童”[3]が社会問題化してしまったのです。
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[1]  年齢別人口のうち労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層。
[2] 共働き世帯1,077万世帯、専業主婦世帯720万世帯
[3] 国の設定する待機児童の定義には「旧定義(~2005年)」と「新定義(2006年~)」があるが、各自治体によって取り扱いが異なるため、実態を反映していないとの指摘もある
・「旧定義」…認可保育所に入所を希望していながら、入所できない子ども
・「新定義」…旧定義に7つの注釈がついており、うち6つが除外注釈となっている
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20年以上続く待機児童問題

国が初めて待機児童数を発表したのが1995年。その数、約2.8万人でした。その後、保育所の受け入れ人数は増えているにもかかわらず、2015年10月時点での待機児童数は約4.5万人と発表されています。更に、自治体が数に挙げていない潜在的な待機児童数が、2015年4月時点で約4.9万人に上るとも。
苦肉の策として「定員」「面積」「保育士資格」等の規制緩和を行い、保育定員を増やして凌いでいますが、保活の激化は止まらず、「保活ノイローゼ」になる保護者も現れているほどです。
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もとより「保育」とは、「乳幼児を適切な環境のもとで健康・安全で安定感をもって活動できるように養護するとともに、その心身を健全に発達するように教育すること(ブリタニカ百科事典)」です。
政府の対策が「保育所の開設ありき」に偏っていることへ疑問を持つ保育所経営者もいる中で、規制緩和を重ねた施設が保育の“適切な環境”になりうるのか、親の目から見ても不安が残ります。

保育所建設以外にも道はあるはず!

また、「復帰までなるべく長く子どもといたい」と保護者が思っても、「1歳の入所は激戦なので0歳から申し込む」「ひとまずどこかへ入所させて認可保育所向けのポイントを稼ぐ」など、やむを得ず早い時期からの入所を考える例も少なくありません。そのしわ寄せで、早い入所を望んでいる人が待機となってしまっては、本末転倒とも言えます。
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では、保育所を増やす以外での解決策はないのでしょうか。
例えば、保育士を多く必要とする0歳の保育については、両親の育児休業を取得しやすくし、家庭で子育てできるよう支援を手厚くしてはどうか、という専門家の意見があります。
確かに「ゆっくり復帰派→十分な支援の中で子育てできる」「早期復帰派→定員枠が空く」そして「保育所→入所希望が殺到せず、無理のない保育が可能となる」と、うまくいけば各方面に利点がありそうです。
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待機児童問題を解消するためには、保育所を建てることももちろん重要ですが、それ以外の角度から様々な対策を考え、子育て世帯の選択肢を増やしていくことも進めていってほしいなと思います。

仕事と生活が調和した社会へ

「人生の節目節目でなにかを諦めるのではなく、なにかを得て、より豊かに自分らしく生きていきたい!」そんな想いを、働くママたちからよく聞きました。
暮らし方、働き方、ひいては生き方そのものについて、10人いれば10通りの希望や理想があります。
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ワーク・ライフ・バランス憲章が謳っているように「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き(中略)子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」が現実化して、大人も子どもも柔軟な考えのもとに暮らせたら、きっともっと幸せな世の中になりますよね。
そのためにも、行政の施策に頼るだけでなく、自分自身でも他にどういう働き方が可能なのか、今大切にしたいことは何なのか、を常に考えていくことが大切なのかなと思います。
誰もが自分の思い描く生き方ができるといいですね!
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【参考文献】
・内閣府「経済2014-2015」
・独立行政法人 労働政策研究・研修機構「専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移」
・立命館大学教授佐藤敬司HP「待機児童数の推移」
・厚生労働省HP「平成27年4月の待機児童数とその後(平成27年10月時点)の状況について
・厚生省児童家庭局保育課長通知「保育所への入所の円滑化について」平成10年
・日本経済新聞「潜在待機児童4.9万人 15年4月、公表人数の倍以上」2016年3月19日付け
・猪熊弘子「『子育て』という政治」角川新書、2014年7月
・日本経済新聞「子育てしやすい社会 どうつくる」2016年5月5日付け朝刊
・内閣府「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
By naoko@Japan


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