シリアってどういう国? ~教育制度から欧州への移住まで~

2011年から戦争がはじまり、多くのシリア人は難民として欧州に移住しています。シリアとはどういう国なのか、教育のしくみから今回の欧州への移動にかかる費用まで、ドイツ在住のiolleyさんがシリアの方にインタビューしてくださいました。反響の多かった『ドイツに来たシリアからの難民の人々』に引き続き2回目のご報告です。身近な問題として、みんなでこれからの世の中について考えることができたらと思います。

大学まで全て学費は無料!整った教育制度

現在、私が通学しているドイツ語の語学学校には、シリアからの方が数名います。その中の一人、救命救急医だった4人の子どもさんがいらっしゃるお父さんにお話を伺いました。
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(内戦前の首都ダマスカス)
シリアの教育システムは、欧州の教育システムとほとんど同じ。ただ、全てがアラビア語だけの授業になりますので、大学もアラビア語での授業が大半のようです。大学まですべて学費は無料で、学校の教育体制もとても良かったとお話されていました。
大学進学も欧州と同様、高校の卒業試験が大学入学へのパスポートになります。医者になるには勉強をしなければいけませんが、日本のように塾などに行く必要もなく、学校の勉強を真面目に取り組むこと、そして医学に関心があれば、希望通りに進学できるそうです。
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日本もこの欧州方式で、高校卒業試験を大学入学の資格にしていければ、大学受験という無駄な時間を過ごさなくてもよくなります。更に日本の大学は、遊んでいても卒業できる雰囲気もあります。大学に入る目的意識をもっと考えてみても良いのかもしれません。
ちなみに、シリアでの人気の職業は何か聞いてみたところ、やはり人気の1位は医者。2位はエンジニア、3位は教師だそうです。このあたりは、世界的に共通しているのですね。
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(ダマスカスバザー)

シリアの物価水準は?

さて、シリアと日本の面積や人口、一人当たりのGDPを比べてみましょう。シリアの面積は18.5万㎢、日本の面積は37.8万㎢なので、面積は日本の半分弱。一方、シリアの人口は2110万人、日本の人口は1億2640万人ですので、日本の人口の約6分の1。1人当たりのGDPは、シリアは3095ドル、日本は4万6407ドルとのことです。
(『今がわかる時代がわかる世界地図2014年度版』成美堂出版より参照)
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シリアの物価は、日本の約10分の1なので、東南アジアとほぼ同じです。月の平均的なお給料は4万円、一戸建ての値段は400万円くらいで、ほとんどが持ち家とのこと。家を借りる人より買う人の方が多いと聞きました。今回の移住で、シリアの多くの方たちは持ち家を捨て、欧州へ来ていることが分かります。

移住に使われる船の値段は??

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シリアの方が欧州に難民として移住してくる際、空港は閉鎖されていたため、トルコまで陸路で行き、トルコから船でイタリアまで渡ったそうです。
トルコからイタリアまでのいかだのような船の値段が一人80万円ですから、シリアの物価が日本の10分の1と考えると、この船の代金は、日本でいえば800万円というところでしょうか。ベンツが購入できるくらいの値段を難民としてイタリアまで行く船に支払ったということになります。(この船の値段は2014年の値段で、現在は下がっているようです)
そしてその貨幣価値も、現在では10分の1まで下がっているようです。戦争になると貨幣価値も下がるため、お金を持っていても紙同然になってしまいます。戦争の怖さがここにもありますね。
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また、お金のないシリア人は、欧州に難民として移動することもできないこと、そして、現在は欧州でも難民の数が増え、制限されている状況であると教えてくれました。逃げる場合も早ければ早いほどよかったことになりますが、早い時点で難民として欧州に移動するには、ベンツを購入するくらいのお金を支払って難民船にのらなければいけないという現状があったのです。

前向きに生きる人々

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自分の国を去らなければ生きていけない、自分の持ち家を捨て異国の地で再出発しなければいけない、という状況を考えたことがあるでしょうか。このようなシリアの難民の方たちも、ドイツで職業を持ち、生きていくために真剣に頑張っています。子どもたちも、ドイツの学校で元気に過ごしているようです。
インタビューに答えていただいた、この医者のお父さんは37歳。子どもさんは、10歳、7歳、4歳、2歳です。ドイツ語の試験を突破して、その後医学専門のドイツ語コースを取るそうです。そして、医者としてドイツで働けるように計画しているまじめなお父さんです。
難民として支援してもらえるドイツでは独り立ちできるまでサポートがあります。きっと、5年後、10年後には、しっかりと税金も納めて、医者として働いていることでしょう。どのような状況でも、前向きに取り組んでいこうとしている姿勢に、いつも大きな勇気をもらっています。
iolley@Germany
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